職場の若い男子。
雑談していたら、「クリスマス、自分、ぼっちですよ~。さみしいっす。」と言って、皆からイジられている。
私も50代になり、今でこそ「クリスマス?だから?キリスト教徒でもあるまいし。」と、「愛の不時着」のユン・セリの名セリフまでいかなくとも、チキンやケーキを食べてワインかシャンパンで乾杯できればいいかなぁぐらいの気持ちでいるが・・・
90年代、クリスマスは特別な日だったように思う。
そんな折、ラジオから東京スカパラダイスオーケストラの「嘘をつく唇」という曲が流れてきた。(Vo.は片平里菜さん)
この曲のちょうど真ん中あたりに、
「どうしよう」
「帰れなくなっちゃった」
という、セリフが入る。
そのセリフをきいて、ある年のクリスマスの夜に
タイムスリップして急にせつなくなった。
昔話を少しだけ。
私の20代は、音楽漬けだった。
音楽漬けと言っても、バンドとか楽器をプレイするほうではなく、もっぱらライブハウス通い。
仕事も音楽関係だったけれど、仕事が終わって毎夜毎夜、東京、中央線沿線のライブハウスや飲み屋に仲間と入り浸る。
高円寺、阿佐ヶ谷、吉祥寺。東中野は総武線だけど・・・
ある年の12月。
「12月25日、夜暇だったら新宿で飲もうよ。」
私が好意を持っていた人から、まさかのお誘いだった。
もちろん、返事はOKだ。
24日じゃなくて、25日だったのが微妙だけれど。
Xmasイブはどんなに残業しても、翌日は彼に会える!そう思ったら、何でも頑張れた。
いつもと違う雰囲気を見せたくて、着ていく服も新しく買った。
ちょっとしたプレゼントも用意した。
我ながらその頃の自分が愛おしい。
そして当日。
万が一のこと(♡)を予想して、新宿駅に着くなりマツキヨでクレンジングとチープなベースファンデーションやルージュを買う。
あれ?
私って草食女子じゃなくて、肉食だったのか??
待ち合わせの某居酒屋で、楽しく飲んで、音楽の話をする。
ギターを教えてもらう約束もして、時間はあっという間に過ぎていった。
でも・・・・何かが違う。
彼は私が音楽関係の仕事をしていたからか、自分のバンドのアピールばかり。
バンドプロフィールとデモテープも渡された。
そう、バンドの売り込みをしたくて私を飲みに誘ったのだった。
深夜の新宿駅。
「じゃあ、また」
彼は山手線に、私は中央線下りホームへ。
万が一のこと(♡)を考えた自分がバカだった。
そうだよな・・・・
何とも言えない思いを抱えて、下りのホームで「う~ん」と、唸る。
下り電車は、もう三鷹までしか行かないのだ。(私の自宅は、もっともっと先)
そうだ。
明日また吉祥寺に出勤するのだから、会社近くに泊まろう。
でもビジネスホテルはもったいないから、上司がいつも話している荻窪の「湯ーとぴあ」という今でいうスーパー銭湯に向かった。
12月25日、20代女子がスーパー銭湯へ行くということを今だから自虐ネタとして話せるけれど、
実際はお風呂の中で、思いきり泣いた。
ちょっとでも好いてくれてると期待した自分が情けない。
何より、好意を持って応援していた人が私の仕事をバンド成功へのメリットと考えたという事実に悲しくなった。
30年ぐらい忘れていた、若かりしXmasのトホホな思い出。
こんな時は、「トッケビ」を観て、思いきり浸りたい。
「どうしよう、帰れなくなっちゃった。」
そんなセリフを、いちどは言ってみたかった。
でも、あの時そのセリフを言っていたら、自虐もできない悲しいXmasだったかもしれない。
そして、言えなかった、言わなかった自分にも、今という50代の今日の日ががやってきたのだ。
日常にちょっとだけ華やかをプラスしたぐらいの聖なる夜がいい。
これを読んでくれたあなたへも、happyXmas♪