旅ゆけば~よろずな diary~

旅の記録と日々のあれこれを綴った日記です。

小池真理子『死の島』を読んで敢えて死というテーマに向き合ってみる・・のお話。

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死の島

 

今夜はオットくんが会社の忘年会。

しかも山梨石和温泉に泊まりなのですよーー♪ ←なんで♪なのだろう(笑)?

12月は忙しくなるので毎年11月のうちに忘年会なのです。

今年も、もうそんな季節なんですね。

 

だから、この時間にひとりパソコンに向かえるのはすっごく新鮮。

ひとり暮らしをしていた頃を思い出す。

 

さて。

秋冬になって自分の中の読書欲がニョキニョキと出てきました。

 

気がつけば仕事・主婦業のあいだに旅欲→読書欲→旅欲のエンドレスで私の1年が繰り返されているような気がする。

 

今回手にとったのは、また小池真理子の小説。 

 

『死の島』

 

死の島

死の島

 

 

小池真理子作品は『無花果の森』に出会って以来読み漁っている。

 

outblue69.hatenablog.com

 

5月には『沈黙のひと』を読んでこれからの人生をどう生きるかという大きなテーマを考えさせられた。

 

outblue69.hatenablog.com

 

小池真理子ワールドにどっぷりで、もう読んでないものは無い?というくらいなのだが、探せば見つかるものだ。

 

2年前病気と闘っていた頃に出版されたものの中に大作がありました。

それが今回読んだ『死の島』。

 

タイトルはぞーっとするけど表紙は芸術的なかっこいい女性の裸体。

この世に生を受けた者、誰もが必ずむかえる死を題材にした小説である。

 

『死の島』小池真理子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKSより引用

 

文藝編集者として出版社に勤務し、定年を迎えたあとはカルチャースクールで小説を教えていた澤 登志男。女性問題で離婚後は独り暮らしを続けているが、腎臓癌に侵され余命いくばくもないことを知る。
エネルギーにあふれた時代を過ぎて、独りで暮らし、独りで死ぬという生き方は、テレビで繰り返し言われるような「痛ましく、さびしい」ことなのか。

プライド高く、理性的なひとりの男が、自分らしい「死」の道を選び取るまでの内面が、率直にリアルに描きつくされる。
人生の幕引きをどうするか。深い問いかけと衝撃を与えてくれる小池真理子の真骨頂。

 

主人公は69歳、男性。

 

私は女性であるし、年齢も親の世代では少し若く、夫や自分のこととしてはまだ実感が沸かない。

でも終活、断捨離、シンプルな暮らし方・・・これから考えていかねばならぬこと。

そして人生において最後は大切に思う人の存在が、いかに心の支えになるかということ。

もっと書けば、性的にではない関係の異性の絆とか。

 

主人公とは年齢も性別も違うのに大いに共感できる部分があった。

 

この小説の重要なシーンがある。

主人公が、先に亡くなった大切な存在の女性の遺品として自分宛てに残されたベックリーンという人が描いた絵『死の島』。

 

アーノルド・ベックリン *死の島【ポスター+フレーム】約 81 x 51 cm ブラック

 

全体的に不気味な絵だが、よく見ると岸にたどり着く船に乗った白装束の人が描かれていて、さらにぞくっとする。

先に亡くなった女性は、何をメッセージとしてこの絵を主人公に残したのだろう。

 

死にゆく人は皆ひとりということなのか。

 

ぼんやりとではあるけれど、この作品の中に人生の終焉、幕引きの時を考えた。

闘病中のからだやこころに対しての焦り、若い人と関わることでの気持ちの変化など、とてもリアルに描かれていて自分の老年期をも想像してしまった。

そして人は、死にゆく時にもこころに大切な人の存在がいるということ=さびしい死に方ではないということ。

 

いろんな部分で心動かされた作品だった。

 

いまごろ私の大切な人は忘年会でコンパニオンのお姉さんに「俳優の〇〇さんに似てますね♡」とか言われて、きっと喜んでいるのだろう。

 

『死の島』という死を題材にした作品なのに、何故か読み終わったあとに自分の大切な人をますます強く想う、そんな一冊でした。