今年の年末年始のテーマは、そう。
『巣ごもり』
今日、近所の図書館で借りられる冊数マックスの10冊を借りてきました。
ずーっと気になっていた桐野夏生さんの新刊「日没」が大人気で借りられないので、
それでも桐野夏生がどうしても読みたい!と、借りてきたコレ。
『夜の谷を行く』
午後、一気に読んでしまいました・・・
年末年始に読むはずだったのに。ちょーっとペラっとめくってみたらもうダメでした。
「おもしろかった!」とか一言では言えない何かが沸き上がってきて。
いま、この興奮冷めやらぬうちに書きたい!と急にパソコン開くという・・。
「夜の谷を行く」は、連合赤軍あさま山荘事件をモチーフにした小説。
少しだけあらすじを。
39年前、西田啓子はリンチ殺人の舞台となった連合赤軍の山岳ベースから脱走した。5年余の服役を経て、いまは一人で静かに過ごしている。だが、2011年、元連合赤軍最高幹部・永田洋子の死の知らせと共に、忘れてしまいたい過去が啓子に迫ってくる。元の仲間、昔の夫から連絡があり、姪に過去を告げねばならず、さらには連合赤軍を取材しているというジャーナリストが現れ―女たちの、連合赤軍の、真実が明かされる。(BOOKデータベースより)
舞台は、服役中だった最高幹部の永田洋子の獄中死と東日本大震災があった2011年。
私はもともと60年代後半から70年代の学生運動の話や、あの頃をふりかえるドキュメント番組などが好きというか・・・
あの時何があったのかということを知りたいし、触れたいのである。
若かった頃、高野悦子の「二十歳の原点」を読み衝撃を受けたり、映画「光の雨」も当時よく観た。
特にトップが永田洋子という女性だったということも、同じ女性としてショッキングであったな。
ただ五十代になった今は、そういう作品に触れる機会もあまりなく、今日だって桐野夏生さんを読むいい機会だなと思って新刊「日没」の代わりに軽い気持ちで借りた作品だったのに・・・・ドハマり。
今年の終わりに、ほんといい縁だなぁと思う。
主人公、啓子は服役後、長年塾を経営していたが現在はひっそりと単身東京で年金暮らし。スポーツクラブと図書館に通う見かけはごく普通の60代。
過去を隠し世間を遠ざけて生きてきたが、2011年。連合赤軍の主犯とみなされ死刑判決を受けていた永田洋子の獄中死をきっかけに過去が亡霊のようによみがえる。
私がどんどん引き込まれていったのは、1年間だけ夫婦だった元夫と再会する中盤のシーンから。
いわゆる「政治結婚」したふたり。
「政治結婚」という言葉もはじめて知ったけれど、あの頃バリバリの活動家だった元夫の現在の姿がショッキングでもあったし、その元夫婦のやりとりも私にとってはリアリティを感じた。
いつもの悪い癖だが、自分に重ねたりして。
わたしも、いつか別れたアイツに会おうとか会いたいと思う日がくるのだろうか?
もう少し歳を重ねると過去を清算したり、あの時の誤解を解いたり、そういう気持ちになったりするんだろうか?
たしかに年齢のせいか、
昔、同じ方向に向かって走っていた同志のようなヒトを思い、
「アイツ、どうしているかな?元気でいるかな?結婚したかな?」
とね・・・
そんな今の自分にとっても、「夜の谷を行く」は、若い頃テロリストとして世間を震撼させた事件に関わって服役までした主人公の啓子のその63歳の今の暮らしが、過去を隠して生きていくその姿が、とても切なく感じる。
そして、次々と現れる当時のいわゆる同志がどんなふうに年を重ねていったのか・・・そういうことは中心となった人以外はあんまり知られていないから、私のような読み手としては一人一人の人生をかみしめながらというか・・・
大切に大切に読みたくなるのかもしれない。
クライマックスは、一緒にアジトから逃げた女性同志との再会。
彼女はなんと名前まで変えて農家に嫁いでいた。そのふたりの会話も絵が浮かぶぐらいの名シーンだと思う。
さらに!
ラスト2ページにきっと誰もが驚く。
私は本を閉じて、しばらくじっと静かに余韻を味わってしまった。
出会ってよかった。
もう私、単純なので、いまさらながら桐野夏生ラブです。