旅ゆけば~よろずな diary~

旅の記録と日々のあれこれを綴った日記です。

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』7年遅れの村上作品で、自分の過去に巡礼の旅を。・・・のお話。

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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

 

すっかり秋も深まって、また私のこころの中のノスタルジックと旅というふたつのドアをコンコンとたたく作品に出会ってしまった!

 

ドアをたたいてくれたのは、かの有名な村上春樹さんです(⋈◍>◡<◍)。✧♡

 

たくさんの村上ファンの方には、申し訳ないくらいの・・・何を隠そう2年ぶりの、しかも人生2冊目の村上作品。

 

この記事で、はまりそう!とか書いておいて・・・・ゴメンなさい(汗)

outblue69.hatenablog.com

 

そんな不届き者のわたしが昨日、読み終えたのは、

 

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

 

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7年前、タイトルの長さや、装丁、何かと話題になって、しかも1週間で100万部というとんでもない発行部数の記録を持つこの1冊。

ハルキストのあいだでは、この作品についての書評や考察、まとめサイト、はたまた当時はフィンランドへの女子旅ツアーまであったらしいので、いまさら私が・・とも思うのですが・・・。

 

でも、ものすごくきれいな文体で♡

わたしも過去への巡礼という素敵な時間を過ごさせてもらったので、村上さんありがとう的な記事になれば・・と書いてみます☺

(後半のフィンランド旅にちなんで、昔の北欧旅写真も一緒に貼りました♪)

 

少しだけあらすじを。

 

物語は現在36歳の建築技師の主人公、多崎つくるが15年前に名古屋での学生時代からの男女4人の仲間からとつぜんの絶交を言い渡されたところからはじまる。

 

「お前とは顔も合わせたくないし、口もききたくもない」

 

この4人の男女の総意、よほどの理由がなければこんな理不尽な宣告などしないと思うのだが、

「理由は自分がいちばんよくわかっているだろう」

と、まったく取り合ってもらえずに、それ以降自分だけグループから追放された形で、当時は自殺を考えるほどの喪失感、孤独感を持ってなんとか生きていた。

 

卒業後は逃げるように東京へ。

過去にふたをして生きてきた多崎つくる。

 

長いタイトルの前半は、その4人の仲間の苗字が、

・赤松(アカ)

・青海(アオ)

・白根(シロ)

・黒埜(クロ)

という、みんな苗字に色がついていること、また、自分だけ色がついていないということ。

これが色彩を持たない多崎つくる

 

そこで、ほおぅ、なるほど~と思う。

 

やがて東京で知り合った恋人、沙羅に

「あなたの心には問題がある」

と、時々心ここにあらずの自分を指摘され、やっとの思いで過去の話をする。

 

その時のやりとりに、ハッとさせられた。

 

「はじめから五人組グループなんてなければ、あんな苦しい思いは経験しなかった」というつくるに、沙羅は

「それから16年以上も経って、あなたは30代後半になっているのよ。そろそろ乗り越えてもいい時期にきてるんじゃない?」

「乗り越える?」

「あのときなぜそこまで拒絶されたのか?されなくてはならなかったのか?その理由をそろそろ明らかにしてもいいんじゃない?」

「どうやって?」

「4人の居場所を探して、グループから追放された理由を聞いてきたらどう?」

 

こうして、4人の友人に会いに行こうとやっとタイトルの後半の「彼の巡礼」の旅がはじまるのだ。

しかもクロにいたっては北欧のフィンランドまで探しに行くという!

 

※フィンランドは行ったことがないけれど、一度だけヘルシンキ乗り継ぎした懐かしのフィンエアー。

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こちらは、またまた懐かしのコペンハーゲン駅。ここから私は昔、列車に乗った。

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沙羅がGooglemapやFacebookを駆使して北欧の人探しをするのが今どきで、生々しいしというか読んでるほうもドキドキする。

さすが村上春樹。読ませるなぁーと思った。

 

それと、「巡礼」というキーワードが印象的であるけれど、シロが昔ピアノでよく弾いていたリストの『巡礼の年』というクラシック曲が何度も登場する。

個人的にわたしの頭では、昔のドラマ「愛という名のもとに」の、浜省さんの曲がずーっと渦を巻いていたけど・・・(学生時代の仲間のイメージがこれ)

リストの「巡礼の年」も機会があったら聴いてみたい。

 

そう!

こんなふうにこの作品は、読者を芸術的や旅情を感じさせ非日常へいざなうんだなー。

 

いまの私にはピッタリだ。

 

ドキドキしながらクロを訪ねてフィンランドへ行ってからの後半部分を読みすすめていくと、村上氏の思惑どおり、また北欧行きてぇ!と、なってしまい・・・

 

昔撮ってきた写真を眺めてまた異国に身を置きたいなぁ。と、思いふけっている自分、なう。

 

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終盤は、こんな湖畔のフィンランドでのクロとの時間で、つくるは、もちろん自分が知りたかった理由も、そして残酷な事実も知ることになる。

 

知りたかった理由が納得いかない誤解であることがわかっても、その自分の過去への巡礼の旅によって、また、そこまでの自分の生きてきた時間も重なって、洗い流されるというか・・・・・

 

人の人生はそんな簡単なことではない。

そうは思っても、フィンランドから東京へ帰って区切りをつけて前を向く清々しい気持ちのようなものは、私にはとても伝わってきた。

 

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自分も50歳を過ぎたころから同じような思いを抱き始めた。

 

会えなくなった人、別れた人、人だけではなく苦しかった時期、時代など自分にとってマイナスな事だと思っていたものが、「それがあったから、いまがある」「その人がいたから今の自分がいる」と思うようになった。

 

もしかして私も壮年期というか、そんな時がきたか?

 

例えば亡くなった父に連れていってもらった千葉の海。

なんとか心を繋ぎ止めようと頑張ったけど去っていった昔の彼と出会ったヨコハマの街。

若かりし頃、野外フェスに行ったあの場所もどうだろう?

 

遠いところじゃなくてもね、自分の過去へのプチ巡礼に出かけてみようか。これからの自分のために。

 

そして、村上春樹さん。もっともっとあなたの作品を読みたいと思います(^^)

 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)